2002年5月9日(木)

今年もまたその季節がめぐってきました。この頃になると私はきっと思い出す光景があるのです。それは物心ついた初めのころのことだと思います。

幼い私の肩まで伸びたわらびの長けた葉っぱの滴るような緑、紺碧の空、近くで鳴いているホトトギスの声、いつも同じように浮かんできます。農家で忙しく子沢山だった母は田植えとわらび採りの時期が重なるため遅くに藪の中に生えるわらびを採るために、私と下の弟をおんぶして野原に行きました。藪に入るのには赤ん坊をおんぶしては行けません。そこでちょっと小高い野原の真ん中に私と弟をおいて藪の中へ入って行きました。横で赤ん坊はすやすや寝ていました。しばらくして私は不安になって泣き出し弟もわらびの中をはいはいしながら二人で母を呼びながら泣きわめいていました。泣きつかれたころ母が帰ってきて「お姉ちゃんが泣いたらおかしいよ・・・」と抱いてくれた時の安堵感・・・そのとき私は母には初めて甘えたような気がしました。

その母は一昨年85歳で帰らぬ人となりました。今私はあの時と同じ場所に来ています。若おかみや調理場のスタッフと一緒にお客さまにお出しするわらびを採るために。一本一本手のひらの中にたまるたびにこれで何人のお客さまが喜んでくれるかな・・・。と思いながら摘んでいます。私は今年はじめてでしたが、調理場の皆さんには感謝しています。春が来ると、先ず蕗のとう、土筆、わらび、 蕗、筍と7月初めまで暇になると山に行き沢山採ってきてくれます。それを塩漬けや卯の花漬けにして一年中お客さまに食べていただけます。山菜取りも結構体力を必要としますが、お客さまの喜ぶ顔が見たくて・・・と言ってくれます。スタッフの皆さんへ・・・深謝。

大分県玖珠郡九重町宝泉寺温泉

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